注文住宅の家づくりの流れは、とても複雑です。あなたも「注文住宅を建てたいけど、手順がよく分からない」とか「土地はもうあるけど、どうすれば?」と悩んでいませんか?
注文住宅の建築の流れを理解することは、スムーズな家づくりへの第一歩です。しかし、一般の方がその流れをすべて理解して覚える必要はありません。建築会社を活用しましょう。
本稿では、注文住宅を建てる流れ(土地あり)について詳しく解説します。あなたも本稿の情報を参考にして、建築会社と一緒に、自分の家づくりをスムーズに進めてみませんか?
注文住宅を購入する流れ(土地あり)
さっそく、土地がある方がどのような手順で家づくりを進めていけばいいのかご説明します。
注文住宅の家づくりは非常に複雑ですが、事前準備をへて建築会社を選ぶところまでが山場です。建築会社が決まれば、あとは建築会社がフォローしてくれますよ。
なお、人によっては、これからご紹介する手順どおりに進みません。個々の事情や建築会社の進め方によって変わります。
さまざまなステップが同時進行で進むケースもあります。その点はご了承ください。
事前準備
まずは、事前準備です。モデルハウスや建築会社へ相談に行く前にやって欲しいことが3つありますので、ご紹介しましょう。
1. 情報収集
まずは、しっかり予習しておきましょう。事前に予習しておくと、家づくりがスムーズに進みます。後悔したり失敗したりするリスクも下がるでしょう。
予習すべきことは「家づくりの流れ、自分に合う建築会社を選ぶ方法、住宅ローンのこと」です。あとは、建築会社のアドバイスを聞きながら進めていけばOKですよ。
なお、以下の資料が、自習の参考になります。
- 専門書
- 専門雑誌
- 建築のプロが発信しているコンテンツ
昨今、家づくり全般の解説書がたくさん出ていますので、お金がかかりますが、ぜひ1冊は読破してみてください。
2. 暮らしのイメージづくり
ある程度家づくりのことが分かってきたら、家族で希望を出し合います。どんな家にしたいのか、家族みんなで話し合ってみてください。
よく分からなければ、今何に困っているのか考えてみるとよいでしょう。
部屋中ものであふれかえっているご家庭なら「収納の多い家にしたい」とか。玄関が狭くて暗いご家庭なら「玄関が開放的な家にしたい」とか、思ったことを書き出しておきましょう。
3. 予算を決める(資金計画)
注文住宅は、超高額商品であり、家計に与える影響が甚大です。失敗すると、人生が狂う場合もあります。
ですから、自分で予算を組む(資金計画)ことがとても大切です。建築会社や銀行任せにしてはいけません。
まず、総予算を決めましょう。総予算は「自己資金(預貯金) + 住宅ローンの借入額」ですので、早めに、住宅ローンの借入額を決めておくべきです。
住宅ローンの借入額を概算で出したい場合は、おおよそ年収の6倍を目安にしていただくとよいでしょう。アプリやネットサービスを使って計算することもできます。
契約の流れ
つづいて、建築会社と契約する流れを2ステップでご紹介します。
1. 建築会社選び
建築会社とは、工務店やハウスメーカーのことです。建築士事務所に依頼する方法もありますが、その場合でも施工を担当する工務店を探す必要があります。
工務店とハウスメーカーは、それぞれ特徴があります。自分に合ったほうを選ぶとよいでしょう。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
》大手ハウスメーカーと注文住宅は相性NG?完全自由設計の家づくりとは
建築会社を選ぶときは、有力候補の会社を3社程度ピックアップします。そのあと、各社に間取り図面や見積書の作成を依頼して、以下の項目に注意しながら比較検討します。
- プランに提案力があるか
- 見積もりは予算内か
- 担当者は信頼できそうか
とくに、見積書はしっかり確認しましょう。どこまでその見積もりに入っていて、どこからオプションなのか確認しておく必要があります。
2. 建築工事請負契約
家づくりを任せる建築会社が決まったら、建築工事請負契約を結びます。契約では、以下の項目を確認していただくとよいでしょう。
- 契約書の内容
- 見積書の内容
- 設計図書の内容
- 瑕疵担保責任の内容
- 保証やアフターサービスの内容
契約書には、約款(契約条項が書かれたもの)だけでなく「着工日、竣工日、違約金」などが書かれています。
約款は難解ですので、できれば契約前にコピーをもらっておくとよいでしょう。一読してから当日を迎えると、落ち着いて契約できます。
支払いや住宅ローンの流れ
つづいて、支払いの流れを5ステップで解説します。
1. 住宅ローン事前審査(仮審査)
住宅ローンは「事前審査」と「本審査」の2つの審査に通らなければ利用できません。
事前審査は、主に住宅ローン利用者の返済能力をチェックする審査で、誰でも無料で申し込めます。物件の担保評価は、簡易的なチェックしかおこなわれません。
一般的に、建築会社と契約するには、かならずどこかの銀行の事前審査承認を取り付けておく必要があります。気になる建築会社を見つけたら、できるだけ早めに事前審査を受けておくとよいでしょう。
事前審査は、ほとんどの方が複数の銀行に申し込まれます。事前審査に通った銀行の中から、金利や団信(加入必須の保険)の条件がよいところを選ばれます。
2. 建築工事の手付金支払い
建築会社と工事の請負契約を結ぶとき、手付金を請求されるケースがあります。手付金の金額は、とくに決まっていません。建築会社によってさまざまです。
手付金不要の会社もありますので、手付金の「要/不要」と金額を早めに確認しておきましょう。設計費用として請求してくる会社もあります。
手付金は、解約手付けとなるのが一般的です。何もなければ建築工事費に充当されますが、建築主都合で解約したい場合は手付金を放棄することで解約できます。
3. 住宅ローンの本審査
住宅ローンの本審査の対象は、建築会社と契約を締結し終わった方です。本審査は1つの銀行だけ申し込む方が多数ですが、事前審査と同様に複数の銀行に申し込むこともできます。
本審査では、本当に融資しても大丈夫か確認するために審査されます。事前審査より多くの情報を確かめたり、お勤め先に在籍確認の電話を入れたりして、慎重に判断されます。
ですから、本審査で落ちてしまうこともあり得ます。とくに、ネット銀行は有店舗の金融機関に比べて落ちるリスクが高いため、他の銀行と同時に審査を進める必要があります。
4. 住宅ローン(金銭消費貸借)契約
住宅ローンの本審査を通過したら、銀行と住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)を結びます。
複数の銀行の本審査に通貨している場合は、金利が低く、団信の内容が充実している銀行を選ぶとよいでしょう。
この契約が終わったら、いよいよ家を建てていく段階に移ります。
5. 建築工事代金の支払い
多くの建築会社は、以下のように建築工事代金の支払いを複数回に分けています。
- 着工金支払い(つなぎ融資)
- 中間金支払い(つなぎ融資)
- 決済(住宅ローン)
上述の例ですと、各タイミングで工事代金の3分の1ずつ支払うのが一般的です。
住宅ローンは、お引き渡しのときに実行されます。ですから、着工金や中間金は専用のローン(つなぎ融資と呼ばれる)を組んで支払うことになります。
住宅ローンが実行されたら、つなぎ融資と工事代金の残金を清算して、晴れてお家が建築主さまのものになります。
建築会社選びの流れ
つづいて、建築会社選びの流れを3ステップでご紹介します。
1. 敷地調査(現場調査)
建築会社を選ぶ際は、複数の会社にプランや見積もりを依頼して比較検討します。ただし、プランを作成する前に以下のような敷地調査が必要です。
- 建築法規確認
- 登記内容確認
- 測量(現場調査)
敷地調査は建築会社がやってくれますので、建築主さまがやることは立ち会いくらいです。
2. 間取りのプランを比べる
プランを作成する際は、建築会社に間取りの希望を伝えます。最初に家族で話し合った内容が、生きてきます。
希望を伝えるときは、できるだけ全社に同じ内容を伝えるようにしてください。各社に違う希望を伝えてしまうと、比較しにくくなります。あらかじめ、リストアップしておくといいでしょう。
希望を伝えたら、間取り図面を作成してもらいます。提案力はあるか、スムーズに生活できる動線になっているか、収納は足りているかなど確認しておきましょう。
3. 概算見積もりを比べる
間取り図面ができたら、次は概算見積もりを作成してもらいます。住み心地や経済性に直結しますので、性能や建材・住設のグレードをチェックしておきましょう。
見積もりに含まれないもの(オプションや付帯工事)を確認しておくことも大切です。
たとえば、エアコンやカーテン、照明器具など。追加で費用が発生しそうなものがないか、かならず建築会社に聞いてください。
打ち合わせの流れ
つづいて、建築会社との打ち合わせの流れを3ステップでご紹介します。
1. 設計打ち合わせ
建築工事を依頼する会社が決まったら、次は設計打ち合わせです。設計の打ち合わせでは、工事に用いるレベルの詳細な図面を使って仕様等を決定していきます。
打ち合わせ内容の例をご紹介しましょう。
- 外壁仕上げ材の選定
- 屋根仕上げ材の選定
- サッシ(玄関ドア・窓)の選定
- 内装仕上げ材(壁紙・床材など)の選定
- 平面詳細(寸法や各部の収まりなど)
- 窓の配置と種類
- 照明の選定(シーリング、ダウンライトなど)
- スイッチの位置確認
- コンセントの位置確認
他にも、建物の配置や高さ、屋根のかけ方などさまざまな項目を決定していきます。
2. 地盤調査(地耐力調査)
建物の形や配置が決まったら、地盤の強度を調査していきます。木造住宅では「スウェーデン式サウンディング(SWS)試験」という方法で調査するのが一般的です。
調査で地盤が軟弱だと分かれば、地盤補強工事(地盤改良工事)を実施して建物が沈み込まないようにします。
ちなみに、2000年の建築基準法改正により、事実上「地盤調査」が必須となっています。地盤調査の結果にのっとった補強工事をおこなえば、地盤保証(有料)を発行してもらえます。
3. 建築確認申請
設計図面がまとまったら、建築確認申請をおこないます。家は、建築確認(行政の確認)を受けて確認済証を交付してもらわなければ建築できません。
建築確認を受けた図面の変更は「軽微な変更届」か「計画変更の確認申請」が必要です。時間とお金がかかるうえ、変更許可がおりるまで工事が止まってしまいます。
ですから、基本的には「建築確認が、図面変更の締め切り」とお考えください。
工事の流れ
つづいて、建築工事の流れを4ステップでご紹介します。
1. 建物工事着工前の準備
確認済証の交付を受けられたら、いよいよ新築工事がスタートします。まずは、以下の準備を終わらせておきましょう。
- 近隣あいさつ回り
- 解体工事(古家がある場合)
- 水道引込工事(道路地下の公設本管から敷地内へ)
- 地鎮祭(希望される場合)
- 地盤補強工事(必要な場合)
工事前から複雑な準備があり大変ですが、安心してください。建築会社が、手配やフォローをしてくれます。
裏を返せば、建築会社選びがとても重要ということです。段取りや手際がよく、信頼できる会社を選んでください。
2. 着工
地盤補強工事が終わったら、いよいよ新築工事の番です。工事中に3回程度、以下のような第三者機関の検査があります。可能であれば、立ち会っていただくとよいでしょう。
- 瑕疵担保保険の基礎検査
- 瑕疵担保保険の構造検査
- 建築確認の中間検査
中間検査は、不要な地域もあります。瑕疵担保保険に加入していない(供託により補償資金を確保している)建築会社は、基礎検査と構造検査もありません。
工事期間後半は、ひさしぶりに建築主さまも忙しくなります。照明器具やエアコン、カーテンの購入と火災保険の準備を進めていきましょう。
住宅ローンの決済には「建物表題登記」が必要ですので、登記も進めていく必要があります。
3. 竣工
竣工(建物完成)したら、以下の作業を進めます。
- 建築確認の完了検査
- 外構工事(玄関アプローチやお庭の工事)
- 建築確認の施主検査
完了検査も、第三者機関の検査です。確認申請図面どおりにできているかチェックされ、合格したら検査済証が交付されます。
施主検査は、建築主さまが仕上がりをチェックできる検査です。じっくり確認して、問題があれば手直ししてもらいましょう。改善されるまで、代金を清算してはいけません。
4. お引き渡し
お引き渡しでは、以下のことが同時におこなわれます。
- 住宅ローンの決済
- お引き渡し
- 所有権保存登記
まず、建築会社に工事代金の残金を支払い、次に所有権を登記することで家の名義が建築主さまになります。
お引き渡しでは、住宅設備などの使い方を説明してもらいます。確認申請関連や保証書・保険関連、説明書等の書類も、忘れずにもらっておきましょう。
住み始めたら、しっかりメンテナンスしましょう。ちゃんと維持管理すると、家が長持ちするだけでなく、修繕コストを減らす効果もあります。
注文住宅の建築にかかる期間の目安
さて、注文住宅は「家を建てたい」と思い立ってから引っ越しできるまで、どのくらいの時間がかかるのでしょうか。
これは、早い人でも1年くらい。土地探しや建築会社選びで手間取ってしまった場合は、数年かかるケースも珍しくありません。
もう少し詳しくご説明しましょう。
スタートから契約まで
家を建てたいと思い立ってから契約まで、2~12か月くらいかかります。
契約までにおこなう主な事項は、事前準備と建築会社選びです。よって、予習にどのくらい時間を使うか、どれくらい早く自分に合った建築会社に巡り会えるかで、契約にたどり着く期間が変わります。
ほとんどの方が、比較検討するために、プランや見積もりを複数社に依頼されます。依頼する会社の数が多くなると、必然的に選考に時間がかかります。
契約から引き渡しまで
契約から引き渡しまで、6~12か月くらいかかります。解体工事や地盤改良工事が必要ならさらに1~2か月プラス、というところでしょう。
契約以降におこなう主な事項は、以下のとおりです。
- 住宅ローン選び
- 打ち合わせ
- 建築確認
- 建築工事
一番時間がかかるのが、工事でしょう。工期は工法や建築会社によって変わりますが、3か月から半年くらいの会社が多いと感じます。
工場で部材をつくって現場で組み立てる大手ハウスメーカーの家は、比較的短期間で完成します。
注文住宅のメリットとデメリット
最後に、家づくりの手順の観点から、注文住宅のメリットとデメリットをご紹介して終わりたいと思います。
知っておきたい注文住宅のデメリット
注文住宅の主なデメリットは、以下のとおりです。
- 打ち合わせの回数が多い
- 住宅ローンの手配が複雑
- すぐに引っ越しできない
注文住宅は、手間と時間がかかります。打ち合わせの回数も、建売住宅や分譲マンションよりかなり多いです。
住宅ローンの手配も複雑です。建築会社の支払い回数が複数回に分かれる場合は、つなぎ融資も準備する必要があります。土地から探す方は、さらに複雑になるでしょう。
また、新築は年単位で時間がかかる一大事業ですから、短期間で引っ越ししたい方には向いていません。
注文住宅ならではのメリット
注文住宅のメリットは、以下のとおりです。
- 一邸一邸オリジナルの設計で建築する
- 建築途中を見ることができる
- 手間暇かけて建てた家は、完成後の感動が大きい
注文住宅を建てるには、時間がかかります。しかし、その代わりに細かい希望でもかなえることができるでしょう。自分好みの家にできますよ。
また、建築途中を見られますので、施工不良がないか確認できるチャンスがあります。定期的に建築現場へ行くと、職人や現場監督の緊張感が高まり、施工精度の向上が期待できます。
手間暇かけて建てた家は、完成後の感動が大きいでしょう。愛着も湧くので、大切にしたくなりますよ。
【まとめ】注文住宅は購入の流れが複雑!余裕を持ってスタートしよう
注文住宅を建てる流れは、非常に複雑です。しかし、大まかにでも流れをつかんでおくことで、家づくりを計画的に進められるようになり、慌てて失敗することがなくなるでしょう。
とは言え、一般の方が独学で「家づくりの流れ」を完全に理解することは難しいでしょう。ですから、できるだけ早く信頼できる建築会社を見つけ、適時にアドバイスをもらってください。
注文住宅の建築は、自分の理想を形にする素晴らしい経験です。あなたも、この記事を参考に、自分だけの理想の家づくりに挑戦してみませんか?