高齢になっても、長く暮らせる家にするため、また幼い子どもがいる家でも安心して暮らせるように、出来るだけ家の床の段差をなくすバリアフリーな家にしたいと思う方は少なくありません。しかし、マンションの中には床の段差を無くせない、バリアフリーに出来ないと言われる場合もあります。

リノベーションをしてもバリアフリーに出来ないマンションがあるのでしょうか?バリアフリーの床にリノベーションして住むためには、どんなマンションを探すと良いのかも含めてご説明したいと思います。

1.マンションだから床をバリアフリーに出来ない!?

バリアフリーリフォームによって快適に暮らせるようになったという方がいる一方で、バリアフリーに出来ない家があるのはなぜなのでしょうか?その理由についてご説明したいと思います。

■マンションのどこをバリアフリーにしたい?

ひとえに床をバリアフリーにすると言っても、どこのバリアを無くすかによって、出来ることと出来ないことがあります。例えば、部屋と部屋をつなぐドアの枠が段差になっているのであれば、床自体には段差が無いのでドア枠を下部に枠がない3方枠タイプに変えることでドアによる段差を無くすことが可能です。また、木フローリングの部屋と畳の部屋では、床材の厚みが違うので床の高さを合わせるために、厚みのある畳の部屋の基準を下げることで表面の高さを合わせています。そのため、畳の部屋を単純にフローリングに変えるだけでは段差が出来てしまいます。しかし、リフォームやリノベーションで床材を変える時は、床の基準の高さを変えることでバリアフリーにすることが可能です。

しかし、玄関の土間部分と廊下の段差が高い場合や、洗面所やトイレ部分だけ高くなっているなど、空間によって段差がある場合は、床自体の高さが違うのでバリアフリーに出来ない場合があります。

■マンションは床の高さを変えられない!?

ドア枠や床の仕上げ材の厚みに関係なく、部屋ごとに床の段差が違うマンションの多くは、デザイン性のためではなく構造上の理由があることが一般的です。段差がある部分は水回りが多いことからも分かるように、排水管が関係しています。

床下に排水管を通すために、洗面脱衣室や浴室の床を高くしていることが少なくありません。戸建であれば排水管の位置を動かしたり、そのために床下を自由に調整したりすることが比較的できますが、マンションの場合は、床下の鉄筋コンクリートは構造体でマンションの共有部分になります。共有部分なので勝手に配管を下げるために梁を削ることはできませんし、メインの配管の位置を動かすことも出来ません。高さの違う床を他の部屋と同じ高さにするためには、高い部分を下げるのではなく、高い部分に合わせるしかありません。しかし、そうすることで、玄関土間との段差がさらに高くなってしまうかもしれず完全なバリアフリーにすることは難しくなります。

このことから、排水管が通っている床ゆえに、バリアフリーに出来ないと言われるのかもしれません。ただし全てのマンションがバリアフリーに出来ないというわけではなく、排水管の位置や間取り、床下の幅など、構造の違いによって、バリアフリーにすることが可能な物件も多いので、建物ごとに確認をすることが重要です。

2.バリアフリーに出来るマンション探しのポイント

マンションの中には排水管を通す位置によってバリアフリーに出来るかどうかが違うので、中古物件を探す際には、その点を意識して探す必要があります。どんな点をチェックするとリノベーションでバリアフリーに出来る物件を選ぶことが出来るのか、ポイントをご紹介したいと思います。

■水回りの段差をチェック!

マンションの場合、リノベーションをしても排水管の都合でバリアフリーに出来ない場合があることを考えると、内覧の際にどこに段差があるかを確認しておくことで、どこに排水管が通っているかを想定し、バリアフリーに出来るかどうかを判断しやすくなります。

例えば、トイレや洗面脱衣室の床と廊下の床の高さが違う場合は、配管が通っている可能性が高くなるので、水回りがバリアフリーに出来ない物件かもしれません。内覧の際には、段差が出来ている部分にどんな理由があるかを確認しておけば、リノベーションによってバリアフリーにすることが出来る場合もあるかもしれません。

■リノベーション後の水回りの位置をチェック

物件探しをしていると、既に床に段差がなくバリアフリーになっている中古マンションもあります。しかし、リノベーションをして水回りの場所を移動させてしまうことで段差が付いてバリアフリーではなくなる場合があるので注意が必要です。

例えば、キッチンを壁付けから対面キッチンにしたり、間取りの変更に伴って位置を大きく変えたりすると、メインの排水管まで、配管をつなぐ必要があります。そして、水が流れるようにするには、勾配が必要なので床下に必要な高さが確保できない場合は、キッチン部分の床やLDK全体の床など、キッチンがある空間の床を上げることになってしまい、他の部屋との段差が出来てしまいます。だからと言ってバリアフリーにするためには、家全体の床をあげて張替える必要が出てくるので、リノベーション費用が高額になりますし、高さを変えることができない玄関の土間との差が出てしまいます。せっかくバリアフリーになっているマンションを見つけても、リノベーションによって段差が生じてしまうなら意味がありません。

物件探しの際には、出来るかぎりリノベーションで間取りを変えても、水回りの位置を大きく変えずにすみそうな物件を選ぶこともポイントです。

3. まとめ

床の段差が生じている理由が、ドア枠があったり、床材の厚みのせいだったりする場合は、リフォームやリノベーションによって床をバリアフリーにすることが可能です。しかし、水回りの給排水管を通すために床を上げている場合は、鉄筋コンクリートの構造部が共有部分であるマンションでは、床をバリアフリーにすることが難しいかもしれません。中古マンションを探す際には、水回りを中心に段差がどこにあるか、そして理由を確認することによってバリアフリーに出来るマンションかどうかを判断するうえで役立ちます。また、リノベーションをして間取りや水回りを動かす可能性がある場合は、配管を通すために段差が出来やすいので、水回りの設備機器を出来る限り動かさなくてよい位置にある物件を選ぶことが重要です。

全てのマンションがバリアフリーに出来ないわけではなく、現在段差がある理由や間取りによってはバリアフリーにすることが可能なので、物件探しの時から意識しておくことが大切です。