スキップフロアを間取りに取り入れることで、敷地を有効活用できます。狭小地なら実際に使える床面積を増やすのに役立ち、傾斜地なら土地の勾配を建設的に生かすのに役立ちます。

しかし、スキップフロアには知っておくべきデメリットもあります。間取りや耐震性などの設計が難しくなり、建築コストも上がる傾向があるのです。

本稿では、スキップフロアの特徴や長所・短所について詳しく解説します。スキップフロアに関心を持っておられる方は、ぜひ最後までご覧ください。

スキップフロアとは

そもそも、スキップフロアとはどんなものなのでしょうか。どんな特徴があるのでしょうか。―― さっそく、スキップフロアの概要からご説明しましょう。

スキップフロアの意味・定義

スキップフロアとは、床の一部に高低差を設けて階段等でつなげる設計手法のことです。このような手法でつくられた空間そのものをスキップフロアと呼ぶ場合もあります。

たとえば、リビングより少し高いところにダイニングをつくったり、ビルトインガレージの天井高をできるだけ低くしてその上部をスキップフロアにしたりします。

他にも、スキップフロアは以下のような呼び方で間取りに取り入れられるケースがあります。

  • 中2階 (1.5階):1階と2階の中間に設けられたスキップフロア
  • 小上がり:床から少しだけ高い位置に設けられたスキップフロア
  • 半地下:半分地下に埋まるような形で設けられたスキップフロア
  • ステップフロア:スキップフロアと同義

ちなみに、マンションのスキップフロアは、まったく意味が違います。マンションの場合は、エレベーターの不停止階をスキップフロアと呼びます (たとえば「偶数階は止まらない」など)。

スキップフロアの特徴

冒頭でもご紹介したとおり、スキップフロアは土地形状を建設的に活用したいときに有用です。たとえば、狭小地や傾斜地はスキップフロアが短所の解消に役に立ちます。

  • 狭小地:スキップフロアで空間を有効活用できる
  • 傾斜地:スキップフロアで斜面をフロア間の高低差に利用できる

スキップフロアを取り入れた設計では、家の中にさまざまな高さのフロアを設けます。住空間を、平面的な利用だけではなく、上下方向にも利用するような感覚で間取りをつくります。

スキップフロアを設けると、段差によって空間の区切りが生まれます。床や天井の高さが異なるだけで、壁がなくても「別々の空間」のように感じるのです。

スキップフロアによる区切りは、壁で区切るより空間の連続性を損なわずに済みます。つながりや開放感を感じる、立体的で躍動感のある空間になります。

壁で区切らないスキップフロアは、家族間のコミュニケーションでも一役買います。実際の面積より広く感じるところも、スキップフロアの魅力のひとつです。

スキップフロアのデメリット

つづいて、スキップフロアのメリットとデメリットについて解説します。まずは、気になるデメリットからご紹介しましょう。

  • 設計するのが難しい
  • コストがかかる
  • バリアフリーに向いていない

それぞれ、詳しく説明します。

設計するのが難しい

スキップフロアは構造が複雑になるため、設計の難度が高くなります。耐震性の確保も難しく、設計者に知識や技量が求められます。

現在の建築基準法では、一般的な木造住宅は建物の強さを調べる「構造計算」を必須としていません (2025年に厳格化される見込み)。しかし、スキップフロアを設ける場合は、構造計算を実施するほうが安心です。

参考まで、スキップフロアにおいて想定するのが難しいポイントをご紹介しましょう。以下のポイントに潜むリスクを解消するために、構造計算が役立ちます。

  • 地震力がどこに作用するか
  • どこにどれだけの力が加わるか
  • 加わった力がどこを伝ってどこに流れるか

また、スキップフロアの下の空間がデッドスペースになってしまっては意味がありません。無駄な空間ができないように、高さの設計に普通の住宅以上の配慮が必要です。

スキップフロアに窓を設ける場合も、よく高さを検討しなければなりません。適当に窓をつけると、外観の不規則感が増し、雑然とした雰囲気になってしまいます。

スキップフロアを間取りに取り入れる際に求められるのは、設計力だけではありません。施工にも精度が求められます。ですから、実績のある優れた業者に建築を依頼することが大切です。

ちなみに、いわゆる「プレハブ工法」を採用している大手ハウスメーカーは、工法や生産の都合で設計の自由度が高くありません。標準的なプランから逸脱すると、断られるか設計・工事代金が跳ね上がります。

土地固有の問題(狭小地や傾斜地など)を解決するためにスキップフロアを活用したい場合は、自由度の高い設計ができる工務店に依頼されることをすすめします。

コストがかかる

スキップフロアがある家は、暮らし始めたとき大きな感動があるでしょう。しかしその分、普通の家に比べて多少コストアップすることは避けられません。

スキップフロアがあると建物の構造が複雑になるため、材料費や施工費が増えます。階段や手すりのデザインにもこだわると、さらにコストアップするでしょう。

また、スキップフロアを取り入れることで有効利用できる床面積を増やすと、その分のコストも増えます。構造計算を実施するなら、その予算も組んでおく必要があります。

ランニングコストも、ご留意ください。スキップフロアによって壁を少なくした空間は、空調が効きにくくなります。全館空調や高気密高断熱なども採用して、省エネとの両立を図っていただくとよいでしょう。

バリアフリーに向いていない

スキップフロアは室内に段差が生じるため、バリアフリーには向いていません。高齢になったときや歩行が困難になったときにどうするか、考えておいたほうがよいでしょう。

解決策としては、平屋に建て替えたりマンションに引っ越したりする方法が考えられます。そのような計画を持っている場合と持っていない場合では、日々の暮らし方や建物の維持管理の仕方が変わってくるでしょう。

なお、段差はお掃除の際にもちょっとした障壁になります。とくにロボット掃除機を利用される場合は、1回の出動で全フロアの掃除をするのが困難になります。その点もご留意のうえ、間取りをご計画ください。

スキップフロアのメリット

つづいて、スキップフロアのメリットを3つご紹介します。

  • 敷地を有効活用できる
  • 個性的な空間になる
  • 家族の気配を感じ取りやすい

それぞれ、詳しく解説します。

敷地を有効活用できる

スキップフロアを活用すると、有効面積(実際に使える床面積)を増やせます。

一般住宅は建築基準法で床面積の制限が設けられていますが、同時に制限を緩和する規定も用意されています。スキップフロアは、一定の条件を満たせば床面積の計算に含めなくて済みます。

参考:建築基準法 第52条(容積率)

面積不算入の条件は、自治体ごとに異なります。以下のような条件をよく見かけますが、スキップフロアを採用される場合は、規定に詳しい設計者とよく相談してください。固定資産税にも関わってきます。

  • 天井の高さが1.4m以下
  • 直下の階の床面積の2分の1未満

この緩和条件を利用すると、床面積が小さい家でも、スキップフロアを採用すると利用できる床面積を広げられます。たとえば、スキップフロアの下の空間を天井高1.4メートル以下の収納庫にすれば、床面積の計算に含めなくて済みます。

高低差のある傾斜地では、スキップフロアを活用することで土地の勾配を建設的に利用できます。土地を平らにするための掘削や盛り土、土留め擁壁などの工事を削減できますので、造成コストの節約につながるでしょう。

なお、スキップフロアを利用すると、採光や風通しもやりやすくなります。間仕切り壁を少なくすることで風を通り抜けやすくしたり、フロアとフロアを段差によってずらし、その間から奥の空間まで光を届けたりできます。

個性的な空間になる

スキップフロアは、段差で空間を区切ります。空間ごとに床や天井の高さが異なり、ひと味違う面白い雰囲気のある間取りになります。とくに男性は、秘密基地のような一風変わった空間にワクワクされるようです。

このことから、土地の問題解決の手段としてだけでなく、オシャレな家にするためにスキップフロアを採用される方も少なくありません。新居にご友人を呼ばれた際、独特な空間構成にきっと驚いてくれることでしょう。

スキップフロアは、お子さまにも評判がよいです。家にいる時間が楽しくなり、お出かけが減ってしまうかもしれませんね。

中見出し:家族の気配を感じ取りやすい

普通の家は、壁で空間(部屋)を区切ります。この方法ですと、違う空間にいる方が何をしているのか分かりません。

スキップフロアは空間を壁で区切らず、高低差によって区切り、空間どうしのつながりを維持しています。視界や音が完全に遮られませんので、隣の空間にいる家族の存在を身近に感じられるでしょう。

たとえば、LDKの隣にスキップフロアのキッズスペースを設ければ、料理しながらお子さまが遊んでいる様子を確かめられます。お子さまが大きくなったら、家族共有のワークスペースに転用されるとよいでしょう。

【まとめ】スキップフロアを採用するときは長所と短所を理解しよう

スキップフロアは、土地に関わる問題を解決するために用いられるのが一般的でした。しかし、その独特の空間構成から、オシャレな家にするために採用される方が増えました。

しかし、スキップフロアには長所だけでなく短所もあります。その短所を理解し、フォローしながらうまく取り入れることで、住み始めたあとの満足度が向上します。

スキップフロアに興味がある方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの敷地やご要望に合うスキップフロアの間取りができないか、一緒に考えてみませんか?