インターネットやSNSを見ていると、注文住宅を建てた方が間取りの失敗事例を載せています。「もっとこうすればよかった」と書かれているのを見ると「なるほど、気をつけよう」と思う人が少なくないでしょう。
しかし注文住宅の間取りは、お部屋の配置だけでなく、窓や配線など気配りすべき箇所がたくさんあります。ネットの情報をしらみつぶしに読んでも、すべてに注意を向け、完全に失敗を防ぐことは困難です。
とは言え、間取りの失敗を防げないわけではありません。ゼロにはできないかもしれませんが、トコトン失敗が起こらないように対策を試みることはできます。
本稿では、間取りで失敗しないための注意点や後悔を減らすコツをご紹介します。これから注文住宅の間取りを検討される方は、ぜひ最後までご覧ください。
間取りで後悔しないために注意したいこと
家づくりの失敗は、後悔に変わります。そして、文字どおり「住み始めたあとで悔いる」ことになります。
ネットで失敗事例をたくさん読んでも、ご自宅の間取りを練っているときは、なかなか失敗に気づけないものです。少しでも失敗のリスクを減らしたいなら、以下に気をつけていただくとよいでしょう。
- 間取りから工夫が感じ取れる建築会社に依頼する
- 建築会社に要望を伝える際、裁量の余地を持たせる
- 環境(音・通風・採光・におい・温度・視線等)に注意する
- 図面上で何度も生活をシミュレーションする
それぞれ、詳しく解説しましょう。
間取りから工夫が感じ取れる建築会社に依頼する
間取りの失敗を減らすには、間取りから工夫が感じ取れる建築会社に依頼することが大切です。こだわりの間取りを提案し続けている会社なら、間取りに関する知見が蓄積されているでしょう。
では、どうやって「間取りに工夫が感じられる建築会社」を見つければいいのでしょうか? ―― 気になる会社を見つけたら、ぜひ、見学会(現場見学回、完成見学会など)に行ってみてください。
多くのモデルハウスは宣伝のために建てられた特別な家であり、その間取りを見ても「すごい!」以外の感想が出にくいでしょう。一方、見学会に参加して実際に人が住む家を見ると、その会社の設計力を感じ取れます。
- モデルハウス ⇒ 宣伝用であり、大きく、見栄えがよい間取り
- 見学会 ⇒ 実際に人が住む家であり、けれん味のないリアルな間取り
ちなみに「大手ハウスメーカーの間取りなら安心!」ということはありません。大手ハウスメーカーの中には以下のような仕組の会社もあり、間取りの質が高くない場合もあります。
- 間取りのベースプランがあって、それを少しカスタマイズするだけの会社
- 設計担当者ではなく、営業マンがファーストプランをつくる会社
「見学会の参加は面倒」と感じるかもしれませんが、間取りが生活に与える影響を考えると、けっして無駄になりません。ぜひ、チャレンジしてみてください。
建築会社に要望を伝える際、裁量の余地を持たせる
多くの建築会社は、できるだけお施主様(建築主)のご要望を実現したいと考えています。ですから、お施主様の強いご要望は、最適な間取りにならないと分かっていても従う傾向があります。
しかし、建築会社に裁量の余地があれば話は別です。ご要望を伝えるときは、建築士のアイデアを引き出すような伝え方をしていただくとよいでしょう。
たとえば、あなたが「家族が集える、明るくて広々としたLDKにしたいな」と思っているとしましょう。
- 建築会社に裁量の余地がない伝え方 ⇒「LDKは南側で、20帖以上にしたい」
- 建築会社に裁量の余地がある伝え方 ⇒「家族が集える、明るくて広々としたLDKにしたい」
「LDKは南側で、20帖以上」と強く伝えてしまうと、建築士は南側に20帖以上のLDKを設けようとします。その結果、他の部屋の面積や方位が犠牲になり、生活しにくい家になるかもしれません。
間取りは部分最適より全体最適が大切です。この場合は率直に「家族が集える、明るくて広々としたLDKにしたい」と伝えていただくほうがよいでしょう。そのほうが、さまざまな確度から検討した提案がもらえます。
図面上で何度も生活をシミュレーションする
間取りができ上がったら、図面上で何度も「生活のシミュレーション」をしましょう。間取りの失敗を減らしたいなら、これにかぎります。
生活のスタイルは人それぞれです。建築士の経験則で「よい」と思う間取りであっても、あなたにとって最適な間取りとはかぎりません。最後は、自分でトコトン確認することが大切です。
シミュレーションする際に大事なポイントを、いくつかご紹介しましょう。
- 図面上で、起床から就寝まで、自分が生活しているところを想像してみる
- 今の生活を振り返り、何に困っているか、どこにものがあふれているか思い出す
- 図面以外にも使えるものがあれば、どんどん活用する
生活をシミュレーションするとき、図面以外に使えるのは模型やパース (建物の外観や内観を立体的な絵にしたもの)、VR(バーチャルリアリティ)などです。
建築会社がこのようなサービスを提供している場合は、ご活用いただくとよいでしょう (有償で提供している場合もある)。模型やパース、VRデータがもらえたら、記念にもなりますね。
環境(音・通風・採光・におい・温度・視線等)に注意する
じつは、先述の「生活のシミュレーション」をおこなうだけでは発見しにくい「失敗」があります。それが何かと言うと「音・通風・採光・におい・温度・視線」などの環境的な失敗です。
このような環境的な要素は、図面では表しにくいので想像もしにくく、注意するのが困難です。そのエリアはどこから風が吹いてくるのか、お隣の建物の影が自宅にどんな影響を与えるのか、と意識しなくてはなりません。
熟練の設計士であれば、このような環境的要素にも配慮して設計してくれます。そのエリアの実績が豊富な建築会社を選ぶことが、何よりもリスクヘッジにつながるのです。
間取りの失敗例
つづいて、世間でよくある後悔の事例をご紹介します。間取りのプランをもらったら、当てはまるものがないかチェックしてみてください。
居室(LDK・和室・寝室・子ども部屋等)に関する後悔
居室に関しては「LDK (リビング・ダイニング・キッチン)」と「和室・寝室・子ども部屋」に分けてご紹介します。
LDK(リビング・ダイニング・キッチン)
LDKでは、以下のような問題が発生しやすいので、ご注意ください。
- リビング階段にしたが、冬は寒く感じる
- リビングを広くするためにキッチンを狭くしすぎてしまった
- LDKを吹き抜けにしたら、キッチンのにおいが2階に広がってしまった
- 開放的なLDKにしたが、壁量が少なく、大地震で倒壊しないか心配
- 子どもの友だちが来たときリビング階段を通るので、生活を見られるようで嫌
- 南側道路の敷地でリビングを南側にしたら、通行人の視線が気になる
「冬は寒く感じる」の原因は、リビング階段だけではなく、家の断熱性能にも問題があります。吹き抜けの「においが広がる」問題も、適切な換気をおこなうことで、軽減したりにおいがこもる時間を短くしたりできます。
とは言え、リビング階段には一長一短があります。リビング階段にするのかしないのか、あなたとご家族のことを考え、どちらにするか決めなくてはなりません。
結局、「開放的なLDK」や「南側リビング」にも言えることですが、突き詰めて考えると大事なことは以下の2点です。
- 長所だけでなく、短所も理解したうえで採用する
- できるかぎり短所の対策をする
ここでも、建築会社選びが大切になってきます。いいことしか言わない御用聞きのような建築会社は、注意が必要です。長所だけでなく、短所や対策方法を教えてくれる建築会社を選ぶべきでしょう。
和室・寝室・子ども部屋
和室や寝室、子ども部屋では、以下のような問題が発生しやすいのでご注意ください。
- 広い子ども部屋をつくったが、こもらないように狭くすればよかった
- 寝るだけしか使わないのに、寝室が広すぎた
- 寝室のベランダにあるエアコン室外機の音や振動が大きくて眠れない
- テレワークが増えてきたが、作業しやすい部屋がなく困っている
- 日中も電気をつけないと暗い
- 夏の西日が入りすぎて、暑い
- 窓を多くしたら、壁が少なくなり、家具を置ける場所がない
- 家具を置くと圧迫感が出て、部屋が窮屈に見える
- 隣家の窓とこちらの窓が、向かい合わせになってしまった
- 窓から風が入ってこない(風通しが悪い)
このような失敗を減らすには、建築士とのコミュニケーションが大切になってきます。あなたのライフスタイルをしっかり伝え、建築士の意見を引き出せる要望の伝え方をしていれば、おのずと後悔するリスクが減るでしょう。
なお、置くことが分かっている家具は、図面に描いてもらいましょう。そうすることで、ちゃんと家具のスペースがあるのか、通路が狭くならないか、確認しやすくなります。
水回り(キッチン・風呂・トイレ・洗面所)に関する後悔
水回りでは、以下のような問題が発生しやすいのでご注意ください。
- オープンなキッチンにしたら、片付いていないのが丸見えに
- 1階の洗面脱衣室に洗濯機を配置したが、2階のベランダまで洗濯物を運ぶのが大変
- 朝は、洗面所やトイレの順番待ちが発生する
- 脱衣所と洗面所を分ければよかった
- 階段下のトイレの空き寸法が狭く、介護ができない
- 玄関の横にトイレの窓があり、音やにおい漏れ、外からの視線が気になる
- トイレは1階のみに設置したが、夜のトイレのたびに1階に降りるのは不便
- LDKのそばにあるトイレの音が気になる
- 洗濯機の音がリビングまで聞こえて、テレビの音が聞こえにくい
- 家事動線がよくない(無駄な移動が多い)
水回りも、間取りの失敗が発生しやすいところです。2階建ての動線は、アパートやマンションなど、平面移動の住宅では想像しなかったトラブルが発生しやすくなります。
繰り返しになりますが、図面上で何度も生活をシミュレーションすることが大切です。
収納(納戸・押入・クローゼット等)に関する後悔
収納では、以下のような問題が発生しやすいのでご注意ください。
- LDKの収納スペースがまったく足りず、ものが散乱している
- アウトドア関係のものを入れる収納スペースがない
- クローゼットの扉が隣の窓のカーテンレールにぶつかり、全開できない
- 収納にじゅうぶんな奥行きがなくて、布団をしまえない
- 小屋裏(屋根裏)収納が使いづらく、ほとんど利用していない
リビングは雑多なものが集まりやすい場所ですが、その割に収納容量が少ない傾向があります。LDKの広さだけに意識を集中すると収納不足に陥りやすいので、収納にも意識を向けましょう。
なお、収納の基本は「適所に適切な高さ・幅・奥行きの収納を設ける」ことですが、最近はファミリークローゼットもはやっています。私室にはクローゼットを設けず最低限の収納家具で済ませ、一箇所に家族共用のクローゼットを設けるのです。
適所収納とファミリークローゼットのような集中収納、どちらがあなたに適しているかシミュレーションしてみてください。
その他(玄関・廊下・ベランダ・ガレージ等)に関する失敗
これまでご紹介してきた後悔事例以外にも、以下のような問題が発生しやすいのでご注意ください。
- 玄関が暗く、ジメッとする
- 玄関にクツのにおいがこもる
- 玄関ドアを開けると、前の道から家の奥が丸見えになる
- 廊下から上がる階段にしたら、子どもと顔を合わせる機会が減った
- 回り階段にしたら、大型家具が2階に搬入できなかった
- ベランダの奥行きが狭く、洗濯物が干しにくく使わなくなった
- ベランダを掃除するとき、水を風呂場までくみに行くのが大変
- 花粉が気になるので、ベランダをやめてランドリールームにすればよかった
玄関はこだわる方が多い一方で、あとから不満が出やすい場所でもあります。そうなる理由は、こだわりの量に対して、玄関の設計を練った時間が短いからかもしれません。
じつは、日本の図面は「南が下」なのに対して欧米の図面は「玄関が下」になっているものがあります。これは、日本人が日照にこだわるのに対して、欧米は玄関のこだわりが強いからでしょう。あなたも、図面の玄関を自分のほうに向け、設計を練ってみてください。
ベランダについては、狭くなるくらいなら無くし、ランドリールームにするご家庭もあります。花粉やPM2.5対策にもなるので、実用的な選択と言えるでしょう。ただし、ベランダに比べて、乾燥機等の電気代が掛かる点は留意が必要です。
大見出し:【まとめ】間取りで失敗や後悔を減らすために大事なこと
間取りの失敗や後悔の事例は、さまざまなものがあります。これまで建築の経験がない個人がすべての失敗を防ごうとしても、そうそう簡単にはできません。
インターネットで他人の成功体験や失敗体験を探して参考にすることも大切ですが、それだけでは不十分です。まず、間取りの作成能力が高い建築会社を見つけることが大事ではないでしょうか。
気になる会社があったら、時間が許すかぎり見学会に参加してみてください。きっと「ここの間取りに共感する!」と思える会社が見つかるでしょう。