どんな住宅でも、築後15~25年くらいの間に次々と水回りの設備に不具合が出始めます。ですから、住宅の所有者は、必ずと言っていいほど水回りのリフォームを経験します。
ところが、水回りのリフォームは落とし穴が多く、失敗したり後悔したりされる方が少なくありません。水回りのリフォームは、業者選びや見積もりチェック、適切な実施タイミングなど、注意すべきポイントが複数あるのです。
本稿では、水回りのリフォームの注意点や、失敗を防ぐために気をつけるポイントをご紹介します。水回りのリフォームをご検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。
水回りのリフォームの注意点
さっそく、水回りのリフォームの注意点を4つご紹介しましょう。
- 完全に壊れる前にリフォームする
- 減税や補助金が使えないかチェックする
- まとめて実施できないか検討する
- 見積もりは、複数社に依頼する
順番に、詳しく解説していきましょう。
完全に壊れる前にリフォームする
水回りは、完全に壊れてしまうと生活に支障が出ます。ですから、業者を厳選しないで決めてしまったり、商品や見積もりの内容をよく吟味しないで急いで承認してしまったりしやすいのです。
しかし、キッチンやお風呂は100万円を超えるものが珍しくありません。そんな高額な設備を、見積もりやカタログだけで決めてしまっていいのでしょうか。ちゃんとショールームで実物を確認してから、購入すべきではないでしょうか。
水回りのリフォームは、きっちり進めていくと工事完了までそれなりに時間がかかります。商品が欠品していることだってあります。実際に昨今では、コロナ禍やロシアショックで、長期間商品が入ってこない事態が発生しました。
水回りのリフォームは、ぜひ時間的な余裕があるときに実施してください。タイミングは、先述のとおり築後15~25年が目安です。不具合が顕在化する前に、計画的にリフォームするとよいでしょう。
減税や補助金が使えないかチェックする
水回りのリフォームは、減税制度や補助金制度を使える場合があります。とくに以下の工事をともなう場合は、使える可能性が高まります。
- バリアフリー化工事(手すり設置、段差解消など)
- 省エネ化工事(主に断熱リフォーム)
減税制度では、要件を満たすと、以下の諸税の減額措置や非課税等の特例措置が受けられます。
- 固定資産税
- 贈与税
- 登録免許税
- 不動産取得税
とくに、中古物件を購入してすぐに水回りのリフォームを実施したうえで住み始めたい方は、減税制度を活用したときの金銭的メリットが大きくなるでしょう。
参考:リフォームの減税制度
補助金制度は、要件となる工事をおこなうことで工事代金の補助が受けられます。
たとえば「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」では、対象となる改修工事にかかる経費の一部について、戸建住宅は「上限額120万円/戸」まで補助金が交付されます。
要支援及び要介護の認定を受けた方は、介護保険法にもとづき一定の住宅改修に対して、20万円まで補助金が支給されます (所得に応じて1~3割自己負担あり)。
他にも、自治体が補助金制度をもうけている場合があります。以下のサイトで検索できますので、探してみてください。
参考:地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト
なお、減税制度や補助金制度は、利用する際に事前申請が必要な場合があります。リフォームを検討し始めたら、できるだけ早いタイミングでチェックすることをおすすめします。
まとめて実施できないか検討する
家庭内で「水回り」とは、主に「台所・風呂・洗面所・トイレ」の4箇所を指します。水回りのリフォームでは、同じメーカーの水回り設備をセットで導入すると、割引できることがあります。
3点セットや4点セットのパッケージリフォームを提供している会社もありますので、探してみてください。一緒に実施することで、商品代だけでなく施工費用も抑えられます。
なお、部分的に新しくすると、周囲にある劣化したものが目立つようになります。たとえば、キッチンを交換すると台所の壁紙が気になり、あとで「一緒に替えればよかった」と後悔される方が少なくありません。
お部屋の内装の劣化が著しいようなら、同時に替えてしまうほうが気持ちがよいでしょう。
見積もりは、複数社に依頼する
水回りのリフォームの不具合は、施工後しばらくしてから気づくことが少なくありません。ところが、悪質な業者の場合、工事が完了したあと連絡がとれなくなっているケースがあります。
そんな事態にならないように、すぐに駆けつけられる距離(車で1時間県内が目安)に会社があって、たくさんの実績がある業者に工事を依頼しましょう。
懇意の業者がない場合、見積もりは3社以上に依頼することをおすすめします。1社や2社では、比較検討ができません。どういうことか、例をあげて説明します。
- A社の見積額:98万円
- B社の見積額:140万円
- C社の見積額:145万円
たとえば、A社とB社だけ見ると、B社が過剰にもうけているように感じます。ところが、A・B・C社を比べると、A社が異常に安いと分ります。A社の安さに根拠がないなら、B社にしておくほうが賢明かもしれません。
なお、複数社に見積もりを依頼する際は、同じ要望を伝えるようにしてください。各社に伝えた要望が違うと、提案内容を比較しづらくなります。事前に、要望リストを作っておくといいでしょう。
水回りのリフォームの失敗や後悔を防ぐコツ
つづいて、キッチン・お風呂・トイレ・洗面台について、リフォームする際の注意点をそれぞれご紹介します。失敗を予防するのにお役立てください。
キッチンリフォームの注意点
最近のキッチンには、たくさんの調理家電があります。キッチンリフォームをされる場合は、それぞれの置き場所を前もって考えておくとよいでしょう。離隔距離(壁と家電の間に取るべき距離)やコンセントの数にもご注意ください。
キッチンは火気を使用するので、不燃性の内装建材を使うとよいでしょう。たとえば、以下は問題があります。お気をつけください。
- 壁に可燃性のクロス(壁紙)を貼る
- 天井を無垢(むく)の板張りにする
- 窓に可燃性のカーテンをかける
なお、マンションなどの集合住宅は、PS(1階から最上階まで通っている配水管)の位置が決まっています。よって、キッチンの配置もある程度制限を受けますので、移動させたい場合は慎重にご検討ください。
お風呂リフォームの注意点
お風呂は湿気が集まりやすく、壁を剥がしてみると、躯体(建物の主要な構造部分)に腐朽やシロアリの食害が見つかるケースもあります。復旧工事が必要になったり、工期が伸びたりする場合もありますので、ご留意ください。
ヒートショックにも、ご注意ください。入浴中の死亡事故は冬場に急増することが知られていて、ヒートショックの影響が大きいと推測されています。暖房等を設置したり断熱性を高めたりすることで、脱衣室と浴室の温度差をなくしましょう。
参考:ヒートショックを学ぼう!
エコも、お風呂をリフォームする際に留意したいポイントです。水やガスの大半はお風呂が消費していますので、水道光熱費の節約に着目して節水型の浴槽や高効率の給湯器をご導入いただくとよいでしょう。
トイレリフォームの注意点
トイレのリフォームで気をつけたいのは、ずばり「広さ」です。一般的にトイレは必要最小限の広さになっているご家庭が多く、大きめの便器や手すり、収納をつけるとトイレ空間が窮屈になりがちです。
窮屈なトイレは、お掃除がしづらくストレスになります。便器や便座等の機能や使いやすさだけでなく、日頃の維持管理のしやすさにも目を向けてください。床材や壁材も、意匠性だけでなくお掃除のしやすさを考慮して選んでいただくとよいでしょう。
「床排水」や「壁排水」などの排水方式にもご留意ください。選べる便器の選択肢が限定されるかもしれませんので、施工会社とご相談のうえ選んでいただくとよいでしょう。
洗面所・洗面台リフォームの注意点
洗面所の使い勝手を見直すと、生活の悩みが大きく改善される場合があります。たとえば、こんな悩みを抱えていませんか?
- 朝、洗面所が順番待ちになる ⇒ 2人が並んで使える洗面台にする
- 誰かが脱衣中は、洗面台が使えない ⇒ 洗面所と脱衣所を分ける
最近、洗面所と脱衣所を分け、洗面所はランドリールームと兼用にされる方が増えています。間取りの変更は容易ではありませんが、できないか検討してみる価値はあるでしょう。
なお、洗面台に限ったことではありませんが、メーカーのショールームへ行くと便利なオプションをあれもこれも追加したくなり、予算オーバーしてしまう方が少なくありません。
しっかりと自分に必要なものを見極め、衝動買いしないようにするのは意外と難しいです。「使わないものは、掃除の妨げになる」くらいの気持ちを持って見に行くといいかもせれません。
一方で若者を中心に「ミニマル (必要最小限)」という価値観が支持され、余計なものを徹底的に省く方も増えてきました。多様な価値観が共存できる時代です。あなたならではのコーディネートをお楽しみください。
【まとめ】水回りのリフォームの注意点
水回りのリフォームをする際、本稿でご紹介したように、いくつか注意すべきことがあります。とくにマンションは、図面でPS(配水管スペース)の位置を確認したり火災報知器の仕様を確認したり、一戸建てより留意点が多くなります。
リフォーム計画を練っていく前に、お施主さまも施工者も、マンション管理規約に目を通しておくとよいでしょう。水回りに関する規定があれば、原則的にそれに従う必要があります。
リフォーム業者を選ぶ際は、できれば3社程度に見積もりを依頼することをおすすめします。複数の業者を比較したうえで、ご予算に合い、納得がいく提案をしてくれたところに決めるとよいでしょう。
提案や見積書に分からないところがあったら、理解できるまで質問してください。聞きにくい雰囲気の業者は、選んではいけません。