耐震リフォームは、大規模になり費用も高額になる印象があります。「何百万円かかるのだろう?家が古いと1000万円を超えるのでは?」と心配されている方が少なくないでしょう。
実際には「半数以上の耐震リフォームが約190万円以下でおこなわれている」というデータがあります。補助金や減税措置を利用すれば、もっと安く工事できるでしょう。
それをご存じないため耐震リフォームを躊躇される方が多く、住宅の耐震化が進んでいません。しかし、日本は地震大国であり、既存住宅の耐震性向上が喫緊の課題になっています。
本稿では、耐震リフォームの概要や費用について詳しく解説します。ご自宅の耐震性が気になっている方は、ぜひ耐震リフォームの知識を深めるのにお役立てください。
耐震リフォーム(耐震補強工事)とは
さっそく、耐震リフォームの概要からご紹介します。なお、本稿の解説は、主に木造住宅に関するものになります。
耐震リフォームの要点
耐震リフォームとは、地震で建物が倒壊しないようにするためのリフォームのことです。「耐震補強工事」や「耐震改修」と呼ばれることもあります。
既存の住宅は、それぞれ地震の耐性が違います。ですから、適切な耐震工事も違います。耐震リフォームを実施される際は、建物の状態を把握したうえで、あなたのご自宅に合った耐震工事をおこなう必要があります。
なお、平成25年11月に改正された耐震改修促進法で、現行の耐震基準に適合しない全ての建築物に、耐震診断および耐震改修をおこなう努力義務が課せられました。
参考:国土交通省「建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する法律案について」
「現行の耐震基準に適合しない」とは、主に1981年以前に建った建築物を指します。この年に住宅に必要な耐震性が大きく見直され、関連法令が改正されました。
また、この新しい基準も2000年に改正されています。ですので、2000年以前に設計された住宅も、耐震性をチェックしていただくほうが望ましいでしょう。
このような流れから、耐震改修促進法(第6条)にもとづく耐震化支援制度が設けられています。この制度のもと、耐震化にかかる個人の負担を軽減するために、国や地方公共団体が様々な支援制度を用意しています。
とたえば、以下の費用の一部が助成されます。
- 耐震診断
- 耐震改修
- 耐震関連設備の設置
- 訪問相談
なお、支援制度の取り組み内容は自治体によって違います。インターネットで「お住まいの市町村名 耐震化支援制度」と検索するなどして、ご確認ください。
ちなみに、過去に大きな地震に耐えられた家だからと言って、安心は禁物です。家の躯体(建築物の主要な構造部分)がダメージを受けていて、耐震性が著しく落ちているかもしれません。
主な耐震補強工事の種類
多くの耐震リフォームでは、一部の壁や床を解体して構造(柱や梁、筋交、基礎など)を補強して、補強後に解体した箇所を復旧します。さて、どのような補強をするのでしょうか。
主な耐震工事の例をご紹介しましょう。
- 基礎の補強(鉄筋コンクリート基礎打ち増し、ベタ基礎化など)
- 床の補強(火打ちばりを入れる、構造用合板を貼るなど)
- 構造の補強(金物や筋交いの追加など)
- 耐力壁の増設
- 屋根や外壁の軽量化
- 蟻害や腐朽、劣化のある部材の取り換え
なお、解体をともなう耐震リフォームでは、一般的なリフォームも一緒に実施する方が多い印象です。解体した壁や床を単純に復旧せず、畳をフローリングに替えたり、水まわりの設備を交換したりされています。
耐震・制震・免震の違い
耐震とよく似た言葉に「免震」や「制震」があります。この3つはどう違うのでしょうか。簡単にご紹介しましょう。
- 耐震:躯体等を堅くして、揺れに耐える
- 免震:建物と地面を絶縁して、揺れを伝えない
- 制震:建物内にダンパー(振動軽減装置)を設置して、揺れを吸収する
木造住宅では、法令や告示にのっとって、まず耐震化するのが一般的です。リフォームでも、耐震性能を高めることが主眼となります。
「免震」は導入や維持管理のコストが高く、一般的な住宅ではあまり用いられません。「制震」は安価に導入できてメンテナンスもほぼ不要ですので、一部のハウスメーカーが耐震化に付加する形で用いています。
耐震リフォームの費用相場と融資・減税・補助金制度
耐震リフォームは、どのくらいの工事費がかかるのでしょうか。また、国や自治体からどのような金銭的補助が受けられるのでしょうか。順番にご紹介しましょう。
工事費用の目安
さっそく、工事費用の目安をご紹介します。なお、ここでご紹介する目安は耐震リフォームのみの工事費です。一緒に実施する一般リフォームや、諸費用については除外していますのでご了承ください。
日本建築防災協会がまとめた資料によると、木造2階建ての場合、耐震リフォームは「100~150万円」でおこなわれることがもっとも多いようです。中央値は186万円で、全体の半数以上の工事が約190万円以下でおこなわれています。
延床面積ごとの目安(耐震診断をおこなっていない場合)は以下のとおりです。ただし、耐震改修工事は、建物の状態により費用のバラツキがかなりあります。あくまで目安とお考えください。
- 100㎡:180万円
- 125㎡:200万円
- 150㎡:230万円
- 175㎡:250万円
- 200㎡:270万円
耐震診断を実施すると、その家の耐震性が「評点」の形で数値化されます (詳しくは後述)。改善すべき部位も明確になり、より的確な耐震リフォームができます。
評点がわかると、耐震リフォームで「評点0.5から評点1.0に上げる (評点差0.5)」のような目標設定ができます。評点差から見た耐震リフォームの工事費の目安は、以下のとおりです。
- 100㎡:評点差0.3 ⇒ 110万円、評点差0.5 ⇒ 140万円、評点差0.7 ⇒ 170万円
- 125㎡:評点差0.3 ⇒ 120万円、評点差0.5 ⇒ 160万円、評点差0.7 ⇒ 190万円
- 150㎡:評点差0.3 ⇒ 140万円、評点差0.5 ⇒ 180万円、評点差0.7 ⇒ 210万円
- 175㎡:評点差0.3 ⇒ 150万円、評点差0.5 ⇒ 190万円、評点差0.7 ⇒ 230万円
- 200㎡:評点差0.3 ⇒ 160万円、評点差0.5 ⇒ 200万円、評点差0.7 ⇒ 240万円
なお、上述の目安もあくまで参考価格になります。実際の工事費は、お見積もりを取ってご確認ください。
耐震リフォームの使える融資・減税・補助金制度
つづいて、耐震リフォームで使える融資・減税・補助金制度をご紹介しましょう。
融資制度
フラット35でおなじみの「住宅金融支援機構」が、耐震リフォームに使える融資制度を設けています。融資限度額は1,500万円まで、最長返済期間は20年まで借りられます。
ただし、融資にはさまざまな条件があります。詳しくは、以下の公式サイトでご確認ください。
なお、銀行や信用金庫などでもリフォームローンを取り扱っているところがあります。お近くの金融機関でご確認ください。
じつは、リフォームローンより住宅ローンのほうが、金利や返済期間などにおいて好条件で借りられる場合があります。ただし、多くの住宅ローンは使いみちを「マイホームの建築・購入・増築・改築(建て替え)資金」に限定しています。
耐震リフォームと増築をご検討中の方や、中古物件を買ってすぐに耐震リフォームをしたいとご検討中の方は、住宅ローンが使えないか金融機関にご相談いただくとよいでしょう。
減税制度
耐震リフォームは、要件を満たすと以下の諸税の優遇が受けられます。
- 所得税
- 固定資産税
- 贈与税
- 登録免許税
条件の詳細は、以下のサイトでご確認いただけます。
補助金制度
耐震リフォームは、要件となる改修をおこなうことで、国や自治体から補助金を受け取れます。先述のとおり、制度の取り組み内容は、自治体によって違います。自治体の窓口やインターネットなどを利用して、ご確認ください。
なお、耐震化を条件としない一般リフォームや、省エネやバリアフリー改修をともなうリフォームで利用できる補助金制度もあります。各自治体の取り組みは、以下の検索サイトで探せます。
参考:地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト
耐震リフォームを検討すべき住宅の目安
ご自宅の耐震リフォームをすべきかどうか、悩んでいる方が少なくありません。「危ない気はするけど、これまで耐えてきたからまだ大丈夫では?」と、迷っておられるようです。
さて、耐震リフォームをすべきかどうか判断するのに、なにか基準になるようなものはないのでしょうか。いくつか目安をご紹介しましょう。
1981年以前に建った旧耐震基準の家は注意
倒壊の危険度を測る目安のひとつに「耐震基準」があります。耐震基準とは、建築基準法や同施行令で「最低限クリアすべき」と規定されている耐震性の基準のことです。
この耐震基準は、大震災が起こる度にその教訓を活かして厳格化されています。主な変遷をご紹介しましょう。
- 1950年:旧耐震基準を規定
- 1978年:宮城県沖地震
- 1981年6月1日:新耐震基準に改正
- 1995年:兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)
- 2000年6月1日:2000年基準に改正
耐震基準は、1981年に大きく改められました。この改正以前の耐震基準を「旧耐震基準」と呼び、以降の耐震基準を「新耐震基準」と呼んでいます。
兵庫県南部地震では、この旧耐震基準の建物に被害が集中しました。ですので、まず1981年以前に建った住宅の耐震化が急がれているのです。
なお、このような法改正により、古い建物の耐震基準が現行基準に満たなくなる現象がおこります。そこで、建築物の増改築時には必ず原稿の耐震基準に適合するように義務化されています。
地震に弱い可能性がある家の特徴
つづいて、地震に弱い可能性がある家の特徴をご紹介しましょう。
- 地盤が弱く、補強されていない
- 基礎に不意がある(無筋やヒビ、玉石など)
- 躯体が腐朽している
- シロアリの食害を受けている
- 耐力壁に不備がある(壁量不足、バランスが悪いなど)
- 構造の接合部に不備がある(抜ける、ゆがむなど)
- 建物の縦方向と横方向の長さが極端に違う
- 建物の形が複雑(凹凸が多い)
- 屋根が重い
- 窓が多い
- ビルトインガレージがある
- 地震が発生していないのによく揺れる
上述の特徴に当てはまる場合でも、対策がなされているケースもあります。心配な方は、耐震診断を受けていただくとよいでしょう。
耐震診断について
耐震診断とは、建物の強度を調査して地震に対するリスクを確認する調査のことです。実施することで、より的確な耐震リフォームができるようになります。
木造住宅の場合は、まずお住まいの方がご自分で簡易調査できます。調査のチェックポイントは、以下のサイトでご確認いただけます。
専門家に依頼する耐震診断では、大地震で倒壊する可能性を診断後に分かる評点を用いて「4段階」で判定します。
- 1.5以上:◎(倒壊しない)
- 1.0以上~1.5未満:○(一応倒壊しない、現在の建築基準法相当)
- 0.7以上~1.0未満:△(倒壊する可能性がある)
- 0.7未満:×(倒壊する可能性が高い)
耐震リフォームでは、評点1.0超えを目指すのがひとつの目標になります。
なお、自治体によっては、無料で耐震診断が受けられます。お住まいの自治体の窓口やインターネットなどを利用してご確認ください。
【まとめ】耐震リフォーム(耐震補強工事)とは
日本は地震大国であり、これまで大震災による家屋の倒壊で多くの人命が失われてきました。ニュースでその惨状を見て、残されたご遺族の気持ちに共感し、胸が締め付けられるように感じた方もおられることでしょう。
しかし、いざご自宅のことになると「うちは、大丈夫だろう」と人ごとのように感じてしまいがちです。制度を利用すると無料で耐震診断が受けられますので、試しに調査してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
弊社は、愛知県碧南市を中心とするエリアで耐震リフォームを承っております。複数の実績がありますので、耐震リフォームのことでお悩みの方はお気軽にご相談ください。